(AERA 2021年12月6日号より)
(AERA 2021年12月6日号より)

 睡眠段階1は、意識が完全には途絶していないまどろんでいる状態で、脳もまだ休息に入っていない。睡眠段階2では完全に意識がなくなり、脳が休息を始める。体の力が抜け、頭を立てたままでいられなくなるのも睡眠段階2だ。電車でウトウトしていて隣の人にもたれかかってしまうのは睡眠段階2に入った証拠と言える。

 林教授らの研究では、睡眠段階2が3分以上続くと、仮眠後のパフォーマンス改善に効果が見られた。さらに、睡眠段階1が始まってから平均6分で睡眠段階2に入ることもわかった。

仮眠の直前にコーヒー

 パフォーマンス改善に必要な持続時間3分を足せば、9分だ。早い人ではそこから10分程度、つまり睡眠段階1が始まって20分ほどで睡眠段階3に入るという。

「個人差・年齢差はありますが、現役世代の方なら10~15分が理想的な仮眠時間と言えます。実際には入眠までに少し時間がかかるので、仮眠開始の15~20分後にアラームをかけておくのがベストです」(同)

東京・日本橋に本社を構える寝具メーカー・西川の仮眠室「ちょっと寝ルーム」も、この睡眠段階の考え方をもとに設計されている。同社の研究機関・日本睡眠科学研究所で睡眠や生体リズムの研究を担う安藤翠さんは言う。

「眠りにつきやすいリラックスした空間でありながらも、深い眠りにならず、すっきり目覚められる環境づくりを重視しています」

 西川の仮眠室は様々なパターンがあり、多くは枕を使ってデスクに突っ伏すスタイル。ベッドには30度ほど角度がついていて、完全には横にならない。仮眠の直前にコーヒーなどでカフェインを取る「コーヒーナップ」も、すっきりとした目覚めに効果が期待できるという。

 昼寝はときに、「サボっている」とも見られがちだ。だが実は、昼寝はパフォーマンスを上げる大きな武器にもなるのだ。(編集部・川口穣)

AERA 2021年12月6日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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