ぜんそくは子どもの病気と思われがちだが、大人の患者の8割近くは、成人してから初めて発症している。咳はよくある症状なので放置されやすいが、初期のぜんそくの可能性も。早期の見極め、治療することが重症化を防ぐ。
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新型コロナウイルスが流行してからは、ちょっとした咳でも不安に感じることが多くなっただろう。しかしコロナ禍前は違った。咳は呼吸器の症状のなかでも身近なもので、風邪を引いた後などに咳が長引いても、「たかが咳」と放置しがちではなかっただろうか。
咳の原因として多いのは風邪だが、通常であれば、咳は1週間程度、長くても2週間程度で治まる。それが3週間以上続くようなら、ほかの病気が考えられる。マイコプラズマ肺炎や百日咳、結核など風邪以外の感染症のほか、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺がんなどの場合もある。ぜんそくも、長引く咳の原因の一つだ。
ぜんそくは潜在患者も含めると、日本人の10人に1人は発症しているといわれている。15歳までに発症する「小児ぜんそく」と、大人になって発症する「成人ぜんそく」に分けられる。小児ぜんそくが大人になって再発するケースもあるが、大人になってから初めて症状が出るケースが多く、成人ぜんそくの70~80%を占める。
代表的な症状は、繰り返す咳のほか、呼吸時にゼーゼー、ヒューヒュー音がする喘鳴、息切れ、息苦しさなどだ。
これらの症状は、空気の通り道である気管が、さまざまな刺激に対する反応などによって炎症を起こし、それが慢性化して気道が狭くなることで起こる。そして刺激に対して過敏になり、発作を起こしやすくなるという悪循環に陥る。炎症を放置すると気道の構造が変化し、気道が硬くなっていく。すると重症化し、治りにくくなる。
■疲れや環境変化が発症の引き金に
小児ぜんそくは、ダニやホコリ、ペットのフケや毛など、原因物質(アレルゲン)を特定しやすい。一方、大人の場合は原因を特定しにくい傾向がある。国立国際医療研究センター病院呼吸器内科診療科長の放生雅章医師はこう話す。