小池:しかも、真ん中にカラー写真よ。ハグし合っちゃって(笑)。あれは驚きましたね。

林:いまだかつて、直木賞が1面でカラー写真なんてなかったと思う。だから夫婦で直木賞ってどれだけすごいことだったか。あのとき、軽井沢から来る小池さんをみんな待ってたんですよね。

小池:途中、携帯で連絡をとりながら新幹線に乗ってて、文春の司会者が会場で「ただいま小池さんは大宮を通過しました」って(笑)。私の担当編集者が東京駅まで迎えに来てくれて、すぐに駆けつけたら……。

林:カメラのシャッターがバシャバシャッと。

小池:私も込み上がってくるものがあって、思わずお互いハグし合ったところを撮られたんです。

林:直木賞がいちばん有名ですけど、その先に私たちエンタメ系作家の目標となる吉川英治文学賞という大きな賞があって、夫婦が受賞者って、もう絶対出てこないと思うけど、小池さんが先にとって、その何年後?

小池:私の吉川英治文学賞が13年で、彼が17年だから4年後。がんが発覚する1年前でしたから、私はそれはほんとによかったと思っています。彼は吉川英治文学賞を受賞する前後から、疲労を訴えることが多くなっていました。吉川英治文学賞という最高峰の賞がとれたので、「お互い、もう少し休み休みやろうよ」と言い始めていたんですが。

林:藤田さん、人間ドックとかには入ってなかったの?

小池:病院とか検査とか、大嫌いでしたもん。「検査受けてきてよ」と言うと、「イヤだ。死んでも行かない」とか言って、そこでケンカになるという感じ。

林:ああ、そうでしたか。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

小池真理子(こいけ・まりこ/1952年、東京都生まれ。成蹊大学文学部卒。出版社勤務を経て、78年にエッセー『知的悪女のすすめ』を発表。89年「妻の女友達」で日本推理作家協会賞、96年に『恋』で直木賞、98年に『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年に『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、12年『無花果の森』で芸術選奨文部科学大臣賞、13年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞。近著に『死の島』『神よ憐れみたまえ』など。最新刊はエッセー『月夜の森の梟』。

>>【作家・小池真理子「平均的な夫婦の千倍の言葉を交わしてた」『月夜の森の梟』が話題 】へ続く

週刊朝日  2021年12月10日号より抜粋

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