國村さんの迫真の演技は大きなみどころのひとつ (c)Larry Horricks
國村さんの迫真の演技は大きなみどころのひとつ (c)Larry Horricks

「水俣での上映会が無事に終わってほっとした」と國村さんが表情を緩めた。TBSドラマ『日本沈没』など、社会派の映像作品が相次ぐ彼だが、『MINAMATA』のオーディションに臨んだもう一つの理由に、ジョニー・デップと共演したいという思いがあった。

「(無垢な心の人造人間と少女の触れ合いの)『シザーハンズ』の主人公、エドワード・シザーハンズは素晴らしかった。ピュアでナイーブ。そんな役柄をジョニーほど完璧に演じる役者はいません」

 プロデューサーにも名を連ねたジョニー・デップがユージンを演じると、元妻のアイリーンさんが一瞬本人かと思うほど似ていたという。「一人の関心を持つ者として、この歴史は語り継がなければならない」と彼はベルリン国際映画祭の公式記者会見で語った。

 命の尊厳と人間社会のあり方を質(ただ)す『MINAMATA』で、ジョニー・デップ、國村隼が正面から対峙したが、「過去の誤りをもって、未来に絶望しない人びとに捧げる」(ユージン・スミス/写真集『MINAMATA』)という言葉が、彼らの演技の根幹にあったのは間違いない。

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

週刊朝日  2021年12月10日号

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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