「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」(2019年、日本)片渕須直監督によるアニメーション。大ヒットした「この世界の片隅に」に、遊郭で働く女性リンのエピソードなどを追加した新作(c)2019 こうの史代・双葉社/ 「この世界の片隅に」製作委員会
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」(2019年、日本)片渕須直監督によるアニメーション。大ヒットした「この世界の片隅に」に、遊郭で働く女性リンのエピソードなどを追加した新作(c)2019 こうの史代・双葉社/ 「この世界の片隅に」製作委員会
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 日本大学芸術学部の学生たちが企画する映画祭が12月4日に始まる。今回のテーマは「ジェンダー・ギャップ」。1930年代から現代まで、幅広い年代の作品を選んだ。若者たちが映画のなかに見つけた問題と、そこから学んだものは何か。AERA2021年12月6日号の記事を紹介する。

【写真特集】今回選ばれた「ジェンダー・ギャップを知る作品」を写真で紹介(12作品)

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 ジェンダー・ギャップ映画祭は、日本大学芸術学部映画学科映像表現・理論コースの映画ビジネスゼミの一環。11回目の今年は19人(男性3人、女性16人)が半年をかけて準備を進めた。企画・運営メンバーの一人、長谷川諒(りょう)さん(21)が、こう話す。

「最初はLGBTQを含むジェンダーをキーワードにしていました。ちょうどそのころ、森喜朗氏の女性蔑視発言があったんです。こんなことを言ってしまうのかと衝撃を受け、時事性と若い世代に訴えたいとの思いから『ジェンダー・ギャップ』がテーマに決まりました」

 作品の選出や上映の交渉も学生たちが行う。担当教授の古賀太さん(60)は「2017年に始まった#MeToo運動以降、ジェンダー・ギャップを題材にした映画は増えています。だからこそ、若者ならではの切実な視点と、映画を学ぶ学生らしい意外性のある作品選びを、とアドバイスしました」という。

昔も今も問題は同じ

 メンバーは学校やアルバイト先で実際に感じたことを話し合い、15作品を選んだ。性差に疑問や悩みを持ち、行動する女性を描いた作品が中心だ。企画リーダーの林香那さん(21)は「選出過程にも学びがありました」と話す。

「1930年代の『新女性』や『浪華悲歌』と、最も新しい『ある職場』は、いずれも職場でのセクハラを扱っています。時間が経っても変わらない問題があると、改めて思いました」

 佐々木悠佳(ゆうか)さん(21)も言う。「『はちどり』や『RBG 最強の85才』など、ジェンダー・ギャップの概念ができてからの映画は理解しやすく、みんなの意見もまとまりやすかった。でも、1930年代の映画には、女は台所にいるべきだという考えが露骨に表現されていたりして、ん?と思うことも。でも、それが当たり前だった時代を知ることで、今がどうなっているかが分かると感じました」

 社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子さん(73)はラインアップを絶賛する。「歴史的な映画を選んでいることに感心しました。女性のいまを知るには、まず過去や歴史を知ることが大事です。私たちの問題はどこから始まって、現在どこまできているのか。映画からはリアルに学ぶことができます」

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ジェンダー・ギャップを学べる映画!