「新女性」(1935年、中国)1930年代の上海を舞台に自立か男性への依存かで揺れる女性を描く。山内菜々子の活弁と宮澤やすみの三味線付きで上映。蔡楚生(ツァイ・チューション)監督/国立映画アーカイブ所蔵
学びが行動につながる
そんななか、映画祭での学びは行動にもつながった。先の総選挙では、取材したメンバー5人中、実家に住民票がある1人をのぞく全員が投票した。「選択的夫婦別姓やジェンダーについての政策を気にするようになった」と全員が口をそろえる。
上野さんもエールを送る。
「日本の状況を変化させるためには、行動して社会を変えないとダメ。いまはSNSでのアクティビズムなどハードルが下がりました。こうした映画祭をはじめ、どんどん声を発信してほしい」
前出の林さんは言う。
「ジェンダー・ギャップを一過性のブームにしたくない。そのためにも私たち自身が考え、行動を続ける必要があると感じています」
ジェンダー・ギャップ映画祭運営メンバーが選んだ15作品
「新女性」(1935年、中国) 1930年代の上海を舞台に自立か男性への依存かで揺れる女性を描く。山内菜々子の活弁と宮澤やすみの三味線付きで上映。蔡楚生(ツァイ・チューション)監督
「赤線基地」(1953年、日本) 米軍基地周辺で生きる女性の現実を描き、公開直前に反米映画として上映が見送られた異色作。谷口千吉監督
「浪華悲歌」(1936年、日本) 父の借金返済のため社長の愛人となった電話交換嬢だが──。溝口健二監督が働く女性の現実を冷静に見つめる
「月は上りぬ」(1954年、日本) 女優・田中絹代による監督第2作。3姉妹の恋愛から当時の女性を取り巻く社会が見える。父親役は笠智衆。脚本は斎藤良輔と小津安二郎
「女が階段を上る時」(1960年、日本) 女性映画の名手・成瀬巳喜男監督が銀座のバーの雇われマダム(高峰秀子)や同僚女性たちの生きづらさを描く
「5時から7時までのクレオ」(1961年、フランス・イタリア) 女性監督の筆頭、アニエス・ヴァルダ作。街をさまようヒロインが男性から多くの視線を向けられる様も印象的
「叫びとささやき」(1973年、スウェーデン) 巨匠イングマール・ベルイマン監督が19世紀スウェーデンの上流貴族女性たちの孤独を鮮烈な色彩で描く
「百万円と苦虫女」(2008年、日本) タナダユキ監督。100万円をためるごとに各地を転々として生きるヒロイン(蒼井優)の成長を描く
「ハンナ・アーレント」(2012年、ドイツ・ルクセンブルク・フランス) アイヒマン裁判を傍聴し「悪の凡庸さ」を世に問うた女性哲学者を描く。マルガレーテ・フォン・トロッタ監督
「少女は自転車にのって」(2012年、サウジアラビア・ドイツ)サウジアラビア初の女性監督、ハイファ・アル=マンスールが自国の女性差別に抗う少女の奮闘を活写する(c)2012, Razor Film Produktion GmbH, High Look Group, Rotana Studios All Rights Reserved.
「少女は自転車にのって」(2012年、サウジアラビア・ドイツ) サウジアラビア初の女性監督、ハイファ・アル=マンスールが自国の女性差別に抗う少女の奮闘を活写する
「RBG 最強の85才」(2018年、アメリカ) 女性最高裁判事として国民的アイコンとなったルース・ベイダー・ギンズバーグを追ったドキュメンタリー
「はちどり」(2018年、韓国・アメリカ) 学生たちが満場一致で選出。女性監督キム・ボラが1990年代の韓国で14歳の少女が直面する世界を描く
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」(2019年、日本) 片渕須直監督によるアニメーション。大ヒットした「この世界の片隅に」に、遊郭で働く女性リンのエピソードなどを追加した新作
「この星は、私の星じゃない」 (2019年、日本)1970年代のウーマンリブ運動をカリスマ的に牽引した田中美津さんを追ったドキュメンタリー。吉峯美和監督
「ある職場」(2022年公開、日本) 実際のセクハラ事件をもとに舩橋淳監督が後日談をフィクションとして映画化。本映画祭でプレミア上映