――昨年度は約90億円だった国からの私学助成金については、来年1月に減額や不交付が必要かどうかの判断が下されます。

 これでカットしなかったら私学助成制度の本旨から逸脱します。文部科学省として当然の判断です。カットは既定路線で、来年度の停止もあり得るでしょう。私が一番懸念しているのは、高等教育無償化の要件(高等教育の修学支援新制度の対象機関)から外されてしまうことです。無償化は、文部科学省や自治体等の認可を受けた大学・短大・高専・専門学校が対象です。そうなると、学生に実害が及びます。こうした状況に陥ることを考えずに対応を怠ってきた理事会の能力の低さを、私はかなり懸念しています。

――補助金が不交付になった場合、学費が将来的に値上がりする可能性もあるのでは。

 それもあり得ることだと思っていて、強く懸念しています。そもそも学生は何も問題を起こしていませんし、悪いのはすべて理事会です。理事会の問題で、学費の値上げに転嫁するなんてことは最悪の選択肢ですよね。私は自分の給料が下がることは覚悟していますが、学費の値上げに転嫁させることは許されないし、学生のためにも、無償化の停止は絶対に避けなければならない。学生に実害が及ぶことだけはなんとしても避ける必要がある。これは教育機関としての使命ですので、強く訴えていきたいです。

――理事長の逮捕について、末松信介文部科学相も「極めて深刻、極めて遺憾」と強い口調で言及し、4度目の指導に踏み切る考えを示しました。

 文科省には、私立学校のガバナンスに手を突っ込める格好な理由をこちら側が与えてしまった。今の学校法人制度でいかにガバナンスを機能させていないかということを、日大が露呈してしまった形になっているので、ちゃんとなさっている大学ほどお怒りだと思います。一方で、「次はうちが文科省からやられるのでは」あるいは「検察に何か捜査されるのではないか」と、戦々恐々としている大学もあると思います。

次のページ
仕組みをあらためなければ再発リスクが高い