――ほかに現場で問題点を感じる機会はありましたか。
日大では、1年生の全学共通教育科目に「自主創造の基礎」という、大学での学び方やキャリア形成への意識づけを図る科目があるのですが、最初に大学本部から提示された基本カリキュラムが「日本への愛国心を養う」といった趣旨のもので、とにかくびっくりしました。このカリキュラムは理事会が先頭に立ってつくっていくものですが、国粋主義かと思ったほどです。日大は海外からの留学生も多く、グローバルな大学であるのに、こんなカリキュラムを作って大丈夫なのかと思いました。今は改善されていますが、原案はひどすぎ、反対意見を本部に対し述べました。教育畑の研究者として高等教育改革にも関わってきた身としては、このレベルでよくやっていられるなと思ったほどです。
――職員人事について田中理事長の意向で「飛ばされる」といった指摘もありますが、その点はどうですか。
(その問題は)よく言われてきた話です。田中理事長の縁故者が、職員採用で優遇されているケースも多くあります。漢字が読めない相撲部出身の職員も実在しますし、体育会で不祥事を起こした職員が本部に配置転換され、なぜか優遇されている例もあります。ただし少なくとも文理学部ではそのような例はあまりないです。アメフト事件以降、日大なりに改革はしてきていて、なるべく適材適所、付属校や学部を含め様々な部門間でスキルを育成する形になろうとはしていました。「トップの意向に逆らうと飛ばされる」といった話がありますが、それは末端の職員にはないです。むしろ文理学部の場合には優秀な人が手腕を評価され、本部に異動されて困るといったことはありました。日大なりに改革しようとはしてきたので、その点についても触れておかないと、フェアな評価ではないと思っています。
――タックル問題に続く今回の不祥事。もっと早く経営陣を刷新しないといけなかったのでは。
刷新しようという意識はあったと思います。昨年の加藤直人学長の就任でほっとした関係者も多かったと思います。加藤学長は体育会の体制を改善することや、体育会の学生が、暴力や人権侵害からきちんと守られながら活動できるようにということを非常に気にかけておられた。ほっとしつつも、やはり田中理事長がいる限り、理事会のガバナンスは機能しないだろうなという心配も同時に抱えていたというのが、現場の教職員たちの最大公約数的なところだと思います。