
マークに入れる言葉は、いくつかの候補から、職場の同僚らと相談したり、友人や障害のある子を持つ親たちにアンケートを取ったりして、ストレートな表現に決めた。今年5月から6月にかけクラウドファンディングを実施。565人から計420万円の支援を受け、現在までに、個人や事業者に2000個弱を配布した。問い合わせも続いているという。
マークを着けた第一号は明ノ心君だ。今年春から、出かけるときはバギーとバッグ、明美さんのバッグと3か所に着けている。
「自分で作ってはみたものの、心のハードルはありました。本当にいい方向に向かうのだろうかと。でも、今は着けて良かったと実感しています。コロナ禍で人と出会う機会が少ない中でも、マークに気付いたお母さんが自分の子どもに、どうして明ノ心がバギーに乗っているかを説明してくれたりする場面が増えています。障害をオープンにすることで、話しやすくなる効果があるんだと思います」
前向きに話す明美さんだが、ずっとこうだったわけではない。
明ノ心君が生まれてまもない頃、明美さんは息子が目を全然開けないことに気が付いた。指で開いて目をのぞき込んでみると、眼球が黒ではなく灰色で、横に揺れていた。インターネットで調べ、障害の可能性を知った。
生後2カ月で眼科に行ったところ、医師から将来、弱視になる可能性を告げられた。そして3カ月目、今度は自治体の健診で、両耳が聞こえないことが分かった。
明美さんは、その帰り道に泣いた。「これは夢なのか、本当のことなのか」。なぜこの子は耳が聞こえないのか。どうしてこんなことになったのか。自分の何がいけなかったのか……。自分を責めて毎日泣いた。
1週間ほどたったある日。息子を見ていて、ふと、気が付いた。明ノ心君は、何も変わっていない。毎日、懸命に生きようとしている赤ちゃんのままだ。変わったのは自分の心だけだということに。
「自分を責め続けているということは、気持ちの矢印が自分だけに向いているということ。明ノ心に向いていないことに、はっと気が付いたんです。息子の前では笑っている母でいようと、その時、決めました。泣くんだったら、笑いながら泣きます」