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「だからあらかじめ、番組中に起こりうることを可能なかぎり思い描いて、『この話をすると、◯◯さんはこう話すかもしれない』『それを受けて△△さんは、こんなお話をされるのではないか』と、ひとつひとつ想像しておくんです。もう妄想に近いレベルですよ。こうしておけば現場でどんな展開になっても、『想像しておいたのに近いシチュエーション! 大丈夫、落ち着こう』と冷静に対応できるんです」

 頭で考えるだけではなく、体を動かすこともある。

「すでにある番組を担当する場合は、前任の方を“完全コピー”することからはじめます。2011年、先輩の森若佐紀子アナウンサーが産休に入るのを機に、『ミヤネ屋』を引き継ぐことになりましたが、そのときは2週間べったり張り付きました。じかに質問して答えてもらったり、一緒にスタジオに入って間近で見学したりといったことだけでなく、アナウンサーの席がある報道フロアからスタジオまで、あとをついて歩いてもみました。その後はひとりで同じ動線を何度もたどって、時間の感覚を身につけるんです。生放送では直前に原稿もらうこともしょっちゅうです。それを読みながらスムーズに階段を上がれるかどうかは、実際にやってみないとわからないことですから」

 現場で動いてはじめてわかることもある。先輩は5分でできることを、自分は10分かかるかもしれない。その逆もまた、然り。完全コピーを目指したからこそ、その人と自分の違いが浮かび上がってくる。

「テレビの現場にかぎったことでなく、どんなお仕事もそれぞれ違いのある人たちが集まる場ですよね。まず自分との違いを認めて、それをどう埋めていくかを考えます。他人と自分を比べるのではなく、相手のいいところを見て吸収したい、教えてほしいところを見つけたい、といった感じです」

 アナウンサーは特殊な仕事で、テレビの世界は自分たちから遠い世界に思えるが、『ゆるめる準備』につづられている川田さんの“仕事観”やメソッドは、どんな職業にも通じる普遍的なものばかり。しかも、一本の筋が通っている。

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「人に何か聞くときは、自分の答えや考えを用意していく」