SKY-HI(スカイハイ)/1986年生まれ。本名・日高光啓。ラッパー、プロデューサー、BMSGのCEO。2020年、私財1億円を投じてオーディション「THE FIRST」を始動した(撮影/写真映像部・松永卓也)
SKY-HI(スカイハイ)/1986年生まれ。本名・日高光啓。ラッパー、プロデューサー、BMSGのCEO。2020年、私財1億円を投じてオーディション「THE FIRST」を始動した(撮影/写真映像部・松永卓也)
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 ダンス&ボーカルグループBE:FIRSTを手がけるプロデューサー、CEO・SKY-HIさん。プロデュースや会社経営で、大切しているのは何か。AERA 2022年11月7日号から。

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 人生を楽しく終えようと思ったら、よい人間であったほうが圧倒的によいというのが持論です。周囲によい人だと認識されたほうが、いい仕事にも巡り合えるし、困ったときには力を貸してくれる人と出会いやすい。逆もまた然りで、僕はこれまでその好例も悪例もたくさん見てきました。

 だから、BMSGで一番大切にしているのは、「人にやさしくあれ」ということです。厳しすぎるとミスはマイナスにしかならない。けれども、やさしさがあれば、ミスはコミュニケーションの潤滑油になり、プラスに転じることさえある。そして、助け合っているうちに、全体の中の自身の役割も客観視できたりします。

 たとえば、ふわっとサッカーボールを蹴る前から、「花形だからなんとなく」という雑な理由でフォワードになりたがったら、サッカーの面白さもわからないでしょう。ディフェンダーやキーパーの魅力もわからないですよね。だから、最初は「ボールを蹴るのが楽しい」でいいんだと思います。

 社会も同じで、まずは「社会に出たのが素晴らしい」でいい。そこで助けたり助けられたりしているうちに、自分の得意なことや役割に気づいていけばいい。「花形がいい」とか「この会社じゃないと」とか、雑な価値観に縛られていると、「評価されないのは上が悪い」と恨みを募らせたり、出世しても満足できなかったり、自分が不幸になっていく気がします。

AERA 2022年11月7日号より
AERA 2022年11月7日号より

 固定観念にとらわれず、自分の役割を見いだせたら、きっとネジにもビスにも尊い価値があることに気づく。ならば、すべてを輝かせてみなさいよ、ということです。可能性に気づいて、皆が輝けるチームを築いていったら、ひとりではできない大きなことがあることにも気づくでしょう。

 社会も極論すれば人対人、対人関係でできています。嫌いな人から言われれば、なんでもムカつくでしょう。逆に信頼している人から言われたら、納得がいかなくても受け止めることができる。上司でも部下でも、それは同じじゃないかな。だから、上に立つ人間として最初に築くべきは、その信頼関係だと考えています。

 人として「ありがとう」と「ごめんなさい」が言えることは、大切だって言いますよね。でも、それが言いやすい環境と言いづらい環境は確実にあると思うんです。会社としてシビアな目標を示さなければならないときはありますが、恐怖政治を敷くよりも、お互いが言いたいことを言い合える環境のほうがずっといい。言いやすい環境を作るためなら、僕はいくらでも道化になります。ピリピリした現場は僕自身が一番嫌ですし、純粋に楽しい場所で働きたいという気持ちが大きいですから。(ライター・小松香里)

AERA 2022年11月7日号