東京都医学総合研究所感染制御プロジェクトの小原道法・特別客員研究員は言う。
新型コロナウイルスが感染する際、まずヒトの細胞に結合するのがSたんぱく質だ。南アフリカでウイルスのゲノム(全遺伝情報)を解析しているケープタウン大学など複数の大学や研究所などによるグループ「NGS-SA(Network for Genomic Surveillance in South Africa)」が25日に公表した資料によると、オミクロン株はウイルス全体には50以上の変異がある。うち32カ所の変異がSたんぱく質に集中している。これだけ多くの変異がSたんぱく質に入った変異株はこれまで報告されたことがない。
■ブースターを呼びかけ
ワクチンの効果が低下するだけではない。WHOはこう指摘する。
「他の変異株に比べ、1度感染した人が再感染するリスクも高まる可能性がある」
感染したウイルスとオミクロン株がかなり異なるので、感染してできた免疫(抗体など)が、オミクロン株を防ぎきれない可能性があるからだ。
ただし、これまでにワクチン接種を完了していてオミクロン株に感染したほとんどの人は軽症か無症状と報告されている。
このため、多くの国は、オミクロン株対策としてワクチン接種を国民に呼びかけている。接種がある程度進み、ブースター接種の始まった国は、ブースター接種を受けるよう呼びかけている。
そんな中で英国は29日、ワクチン接種2回完了からブースター接種までの間隔を、それまでの6カ月以上から、3カ月以上に短縮すると決めた。また、接種対象を、それまでの40歳以上から18歳以上に拡大した。
ところで、オミクロン株のSたんぱく質に起きた32の変異のうち10カ所は「RBD(受容体結合領域)」と呼ばれる部分に入っている。
Sたんぱく質がヒトの細胞に結合する際、実際に結合するのは、ヒトの細胞の表面にある、「ACE2受容体」と呼ばれるたんぱく質だ。RBDは、Sたんぱく質のうちACE2受容体と結合する部位だ。ここに変異が入ると、結合力が増し、より感染しやすくなる可能性がある。