南アフリカなどで見つかった新型コロナウイルスの新たな変異株、オミクロンが世界中に広がっている。確実なことはまだわからないが、ワクチン効果の低下が懸念される。AERA 2021年12月13日号から。
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世界保健機関(WHO)は11月26日、南アフリカやボツワナなどアフリカ南部で最初に報告された新型コロナウイルスの新たな変異株を「オミクロン株」と命名し、「懸念すべき変異株」に分類した。国立感染症研究所(感染研)もこれを受けて28日、この変異株を同様の位置づけとした。
WHOの決定に前後して、香港やオランダ、英国、オーストラリア、ブラジル、カナダなど世界中で感染者が見つかっている。当初はアフリカ南部からの渡航者や帰国者だけだったが、英国やドイツなどで、一度も国外に出ていない人の感染も見つかった。アフリカ南部以外の国でもすでに市中感染が広がりつつある可能性がある。
日本国内でも12月1日現在、すでに2人の感染が確認されている。2人とも成田空港の検疫で実施した検査で陽性になり、感染研でウイルスを解析した結果、オミクロン株への感染が確認された。1人はアフリカ南部のナミビアからの渡航者、もう1人は南アメリカのペルーに滞在歴のある男性だった。
■Sたんぱくに変異集中
最初に感染がわかったのはナミビアの日本駐在外交官だった。7月にモデルナ製ワクチンの2回目接種を完了していた。
韓国で11月24日、ナイジェリアから帰国し、感染のわかった2人もワクチン接種を完了していたなど、国外でも、オミクロン株へのブレークスルー感染が報告されている。
30日付のオンライン新聞「タイムズ・オブ・イスラエル」によると、テルアビブ近郊にある病院の医師2人がオミクロン株に感染していることがわかった。1人はロンドンで開催された会議に参加し、帰国した。2人ともブースター接種を打ち終わっていた。
「ファイザーやモデルナのm(メッセンジャー)RNAワクチンは新型コロナウイルスの表面にある突起状のスパイク(S)たんぱく質に対する抗体が体内で作られるように設計されています。オミクロン株はSたんぱく質に多数の変異が入っているため、ワクチンの効果が低下する可能性は十分にあります」