──実際の年齢は熊谷さんのほうが年下だったのに、設定ではお姉さん。
オーディションの後、私と裕子さんどちらが「マー姉ちゃん」になるか、スタッフの間で意見が分かれてもめたらしいということを後で聞きました。役柄が、反対になっていたかもしれないんです。でも、私、裕子さんが妹でよかった。かわいくてかわいくて仕方なかったんです。本当の妹というか、それ以上というか。他の共演者も本当の家族のようにみんな仲良くなりました。ここ2、3年はコロナの流行で途絶えてしまいましたが、「マー姉ちゃん」のメンバーで毎年1回は集まっているんですよ。
──お母さま役は藤田弓子さん。教育熱心なクリスチャンで、貯金が尽きても子供の教育と教会への寄付に精を出します。
お母さまは、毬子さんは画家、町子さんは漫画家になってもらいたい気持ちがあったようですね。なので、本物を見せたい、触れなさいということで、一家で福岡から上京したんだと思います。
先日放送された回で、出入りの大工さんに京都の神社仏閣を見せてあげようと、自分でお金を出して連れていってあげる、というのがありましたよね。このエピソードも、たとえ他人でも縁があった人には「本物を見なさい、触れなさい」という教育だったと思うんです。長谷川家って、本当にそういうご一家だったんでしょうね。
◆「人のため」励むマリ子とサザエ
──町子と毬子さんが誕生させた「サザエさん」は今も国民に愛され続けています。その理由はなんだと思いますか?
マー姉ちゃんもサザエさんも「人のため」にがんばる人、だからじゃないでしょうか。縁の下の力持ちの人なんですよ。誰かを輝かせる人。マー姉ちゃんやサザエさんが明るいんじゃないんですよ。誰かを輝かせるための、明るさなんです。朝、カツオやワカメを「いってらっしゃい」と送り出す明るさ。それは弟妹のためであって、自分じゃないんですね。朝、「いってらっしゃい」というお母さんの明るさは、決して前に出る明るさじゃないんだけど、でも絶対必要。だから不変なんですね。サザエさんは「私が私が」じゃないから。