「これやな」と思いました。手間がかかるので大手メーカーはやりたがらない。でも木工所として培った技術を生かして、確実にお客さまを喜ばせることができる。なにより子どもたちが笑顔で台所に集まるようになったんです。以前は台所に寄りつきもしないダメ男だった僕も、料理を作るようになりました。妻との体験がいまのすべてを作っていると感謝しています。

妻 藤岡嘉奈子[51]藤岡木工所 ショップ&カフェ運営

ふじおか・かなこ◆1970年、愛知県知多市生まれ。90年に服飾専門学校を卒業。3人の子育てを経て、藤岡木工所を手伝うようになる。現在は木工所に隣接するショップとカフェを運営

 もともと服やインテリアが好きだったんです。でも夫の実家の台所は何一つ自分仕様ではなく、暗くて動線も悪かった。体も疲れるけれど、気分が落ち込んでたまりませんでした。家の建て替え時に自分の理想のキッチンを一から設計させてもらい、いままでの不満や思いを全部出しました。この経験がいまにつながっていると感じます。

 小さな木工所のオーダーキッチンを知ってもらうために、まずはキッチンを使う人たちが集えるようなイベントをしようと、隣接する空き地でマルシェを開催し、ショップやカフェもオープンしました。物を売るだけではなく「暮らし」を提案できるような会社になればと思っています。

 夫の行動力や決断の速さ、時代を読む目はすごいと思います。かつて「男は外、女は家」で家事も育児も完璧なワンオペでしたけど、いまは変わってきたと思います。なにより休みの日に台所にいるようになった。オーダーキッチンを扱う人が料理をできない、では困りますからね(笑)。

(構成・中村千晶)

AERA 2021年12月13日号

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