トイレを組み入れた洗面室(リフォーム後の浅井郁子さん宅)
トイレを組み入れた洗面室(リフォーム後の浅井郁子さん宅)

 こだわったのが、たとえ車椅子生活になっても快適に過ごせるための余裕を持った空間作りと、徹底したバリアフリーだ。リフォームにおいて、浅井さんが意識したポイントは七つある。順を追って説明しよう。

 まず一つ目が、仕切りを取り払った広い空間作りだ。車椅子が入れる住空間を考えると、余裕を持った空間が必要になる。そこで、70平米の間取りを3LDKから1LDKに変更し、広いLDKと寝室という作りに。三つあった部屋を一つにし、仕切りを取り払ったことで、ぐっと広い空間が生まれた。廊下は、手すりをつけても車椅子が通れる幅を考慮し、83センチから138センチに拡張。寝室は母と2人で一部屋だが、母の年齢を考えると同じ部屋で寝たほうが何かと安心だ。適度な距離を置いてベッドを配置し、それぞれのスペースを保てる寝室を作った。

 二つ目が、段差の解消。家中の段差をなくすために、寝室のドアは下に見切り材がつかない「上吊り引き戸」に。さらに浴室にも車椅子が入れるよう、ドアの下に段差ができないシステムユニットバスを選んだ。

ドアは全て引き戸にした(リフォーム後の浅井郁子さん宅)
ドアは全て引き戸にした(リフォーム後の浅井郁子さん宅)

 三つ目が、ドアを全て引き戸にしたこと。体の前後移動を伴うドアは、高齢者にとって開け閉めの際に負担になりがちだ。引き戸であれば、ドアのように一歩下がって開けたり、開いた扉を手で押さえる必要もないため、歩行介助時や車椅子でもスムーズに通過しやすい。

「ドアは父の介護のときにも危険性と不便さを感じていたこともあり、引き戸に変えました。さらに開けやすくするために、引き戸の取っ手には病院などでよく見かける長いバーを設置。洗面所などの観音扉型の収納も、扉が頭に当たる危険性を考え、引き戸型を選びました」(浅井さん)

 四つ目が、主な収納を引き出し型にしたこと。高齢になると、中腰になって、かがんで物を取ることが負担になる。そこでキッチンと洗面台の収納は、すべて引き出し型にし、かがまなくても中身を一目瞭然で見られる形式に。玄関の靴箱もオープン式の収納にした。さらに身長より高い場所には収納棚をつけないように配慮した。

次のページ