
私は聴覚障害者とのお付き合いは長くはありません。手話についての理解も浅いからこそ、(ろう者にすれば)無邪気なアイデアを出してしまい、猛反対を受けました。でも、それによって、見える人と聴こえない人を分断してきた「壁」が浮き彫りに。あきらめずに対話を続けることで、見えない世界と聴こえない世界のことをお互い知ることができました。結局、ろうの当事者が「とにかくやってみたら」と後押ししてくれたことで扉が開かれました。振り返れば、いつも扉を開いてくださるのは当事者の方です。

映画の持つ力が届くと人は感動したり心が震えたり。本当に伝わっていくのだなと実感しています。私はそれをあきらめたくない。それが今回のプロジェクトの原動力にもなっていたかもしれません。(取材/文・坂口さゆり)
※AERA 2022年11月7日号