……なんて、気の小さい私に言えるわけもなく。かといって、その間違いファクスの件も伝えないわけにはいかない。「あのー、出来れば今すぐ御社のファクスの送信履歴をご確認頂けますかねぇ」。約1分後に担当者の声にならない声が聞こえた。「申し訳ありません!! こ、こ、こ、このことは何卒御内聞に!! お願いいたしますっ!(大汗)」「勿論ですよ! 誰にも言いません、ていうか言えませんよ!」「助かります! 今後とも宜しくお願いいたします!」。後日、その会社の仕事に行ってみると、私の出演料が数千円上がっていた。「口止め料」? 理由を聞くのも憚られたのでそのままありがたく受け取っておいたが、なんか数千円てのもセコイな……まぁ、そのファクス。どうしようかな、と思ったが何となく、うちにとってある。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『人生のBGMはラジオがちょうどいい』(双葉社)が発売。ぜひご一読を!
※週刊朝日 2021年12月24日号