そんなめくるめく「夫人の世界」。個人的にもっとも「夫人」の威厳と貫目を備えていると思うのは、他でもない桑田佳祐夫人である原由子さんです。彼女ほどさりげなく、しかし盤石に「夫人」であり続けている人を私は知りません。原さんの奥ゆかしさや愛らしさを見るにつけ、「夫人こそがこの世でいちばん強い生き物なのだ」と痛感させられます。
先日、原由子さんのソロアルバムが発売されました。その名も『婦人の肖像』。ここで使われている「婦人」とは、成人した女性を意味する言葉ですが、奇遇にも「婦人」と「夫人」は同音異義語。サウンドだけなら間違いなく「夫人の肖像」と変換してしまう自信があります。これぞ「原坊の威力」です。
そもそも日本随一の「夫人」が、「坊」と呼ばれていること自体すごい話だと思いませんか?『婦人の肖像』。買ったものの怖くてまだ開封できずにいます。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2022年11月11日号