イラスト 小迎裕美子
イラスト 小迎裕美子
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 年末年始は帰省しようかな──と、迷っているところにオミクロン株が出現。さて、みなさんはどうしますか? AERA 2021年12月20日号は、本誌読者のみなさんへのアンケートから今年の帰省事情を探りました。

【イラスト】帰省だけじゃない!「ウィズコロナの5大問題」あるある…

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 南アフリカ政府がオミクロン株の発見を公表したのは11月25日。ブラックフライデーの爆買いで、約2年の清貧生活のリベンジを果たそうと浮かれていた世界は一転、同時株安といった冷や水を浴びせられた。

 楽しみだったり、憂鬱(ゆううつ)だったり、受け止め方はそれぞれだが、この年末年始こそと2年ぶりの“リベンジ帰省”を決めていた人たちにも、オミクロンショックの影響はあったのか。

 AERAのアンケート結果などでわかった結論から言うと、12月初旬現在、オミクロン株で帰省を取りやめた人は意外なほど少数派。コロナと隣り合わせの生活も2年に及び、ドラクエじゃないが、慌てず、騒がず「様子を見ている」人や「予定通り」と初志貫徹する人が多い印象だ。

 どんな心境なのかを聞く前に、オミクロン株報道前後の、帰省に関するデータをおさらいしてみよう。いろいろな調査を見てみると、年末年始の帰省を予定している人は、約1年前の年末年始に帰省した人に比べ、約1~2割の増加というところ。例えば、旅行業者「旅工房」(東京都豊島区)が11月29日に実施した調査では、この年末年始をどこで過ごすかという質問に対し、「自宅」との回答が最も多く84.0%、次いで「帰省(実家や親戚の家など)」が17.8%という結果だった。1年前の年末年始は「自宅」が87.8%、「帰省」12.0%だったので、それぞれ微減、微増にとどまっている。

「感染者数は激減しているが、理由がわからないので、まだ自粛解禁にはほど遠い」(41、パート女性)と、手綱を緩めない人も多く、言われるほど帰省する人は増えていなさそうだ。

■用意は周到に帰省する

 そうしたなか、2年ぶりの帰省を決行するのは、やはりそれなりの理由のある人が多かった。

「子どもが来年から留学予定で、関西に住む私の母に子どもの顔を見せに行かねばと」

 そんな事情で、秋ごろに帰省を決意したのは、東京在住の会社経営の女性(51)。感染者数が再び爆発するなど状況が変化しても、帰省を中止しないで済むよう、「早々に実家近くのホテルを予約しました。オミクロン前から実家には泊まらず、飲み食いもなしで、顔を見せるだけの予定でした」(女性)

 この用意周到ぶりで、オミクロンショック後も、決意は微動だにせず。「もちろん予定通り帰省します」(同)

■コロナでパスは最後か

 他方、オミクロン株によって帰省「しない」ほうの決意を強固にした人もいる。「コロナ以前は、毎年北関東にある義実家に帰省。道は混むし、たくさん集まるので台所の手伝いでくたびれるし、おみやげやお年玉でお金はかかるし、憂鬱のタネでした。それでも今年は帰る予定にしていたものの、オミクロン株が登場したタイミングで中止に。コロナを理由に帰省をパスできるのも今年が最後かもしれないし、ちょっと過敏な反応ですが、許してもらいます」(50、東京都のパート女性)

 昨年の手痛い経験から、今年は「帰省せざるを得ない」という人も。コロナ前は、同じ市内の夫の実家に、家族3人で頻繁に立ち寄っていたという神奈川県の専業主婦(58)だ。

「昨年、初めて緊急事態宣言が発令されたとき、90歳の義母に母の日のプレゼントを玄関先で渡して帰宅したのですが、それを後から激怒されたんです。『あなたたち、私をコロナの保菌者と思っているの? だから家にも入らないの?』と」

 もちろん女性にしてみれば、高齢の義母を感染させまいと考えての行動だった。義母は思い込んだらまっしぐら。最後まで納得しなかった。

「今年は私が喪中なこともあってどうするか相談しましたが、『おせちを注文してある』と、認めてもらえませんでした。こちらの話に聞く耳を持たない義母なので、これで拒絶すると昨年のように非難され、関係がギクシャクする。結局は自分がイヤな思いをするので、今年も普通に帰省することになります」(女性)

 行ってらっしゃい。ドンマイ。

■遠い身内より地域関係

 一方、結論を決めかねて、様子を見ている人も。

「感染状況も今のところ落ち着いているし、2年ぶりの帰省を決めた。親の年齢を考えると会えるうちに会っておきたい」(46、東京都の会社員女性)

 と、帰省予定だが、心配材料はオミクロンより感染者数。

「地方の人たちは、今も東京からの帰省者を恐れる傾向がありそうです。ご近所の目もあるし、と考え始めると、感染者が増え始めたら、正直帰省もどうなるか。残念ですが、親はたまにしか帰らない身内の私より、地域コミュニティーとの関係を良好に保たなければならないと思うので」(同)

 離れて暮らす娘の気持ち、わかります……とまあ、去年より少しだけ、年末年始のコロナとの付き合い方がわかってきたウィズコロナ2年生。

「オミクロンが収束しても、また新たな変異株が出てくると思います。とにかくコロナが完全終息するまで、おとなしくしているしかないんでしょうね」(53、愛知県の会社員男性)

 ……っていつよ?と家族に突っ込みを受けたのか、「移動は車で」「帰省中も遠出はしない」などのマイルールを設けて、今年はそっと帰省を決行するつもりだ。(ライター・福光恵)

AERA 2021年12月20日号