ケンタッキー州メイフィールドにあった弁護士事務所は竜巻で壁などが全て吹っ飛び、強固に作られた金庫室だけが残っていた/12月12日
ケンタッキー州メイフィールドにあった弁護士事務所は竜巻で壁などが全て吹っ飛び、強固に作られた金庫室だけが残っていた/12月12日

 他の点でも、今回の竜巻は特徴的だった。まず、時期だ。米国では5月から6月にかけてが竜巻が最も発生しやすい時期とされている。12月に起きる例もあるが、比較的珍しい。

■こんな経験は初めて

 場所も注目を集めている。米国の中西部は、竜巻が頻繁に発生することで知られる。特にカンザス州やオクラホマ州などの草原地帯は「竜巻街道」と呼ばれるほどだ。

 しかし、ケンタッキー州はカンザス州から500キロ以上東に離れており、地形や気候も異なる。被災現場で話を聞いた人は口をそろえて「このような竜巻の経験は初めて」と答えた。米メディアでは「竜巻街道」が次第に東へと移っている可能性がある、という指摘も出ている。実際にそうだとすれば、人口がより密集しているエリアで発生する竜巻が増えるかもしれない。

 季節外れの気象災害の背景には、気候変動の影響はないのか。11日の会見で、こう問われたバイデン大統領は「天候の激しさは全体的に、地球温暖化と気候変動の影響を受けているが、個別の嵐への影響については答えられない」とした。ただ、この点については米環境保護局(EPA)などに、検証を求めるという。

 もっとも、気候変動が関係していないとしても、今回の竜巻が、予想しない形で災害が起きる可能性を改めて示したのは間違いない。被災したのは、たまたま、竜巻が通った「線」にいた人たちだ。

 次の災害の時には、自分がその「線」にいるかもしれない。だからこそ、他人事ではない。(朝日新聞ニューヨーク支局長・中井大助)

AERA 2021年12月27日号より抜粋

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