名護市に住む年配の地元紙OBは、今回の結果は県全体に広がる有権者心理からある程度予期できたという。
「基地反対の気持ちはまだあるけど、基地問題が動いてゆく期待は抱けない。ならば市長選は市のテーマで、と考える人が増えている気がします」
生前の翁長氏を長く支えてきたある支援者は、今回は知念氏を支持したと明かした。翁長雄志氏と城間氏の2代の市長の手で、ゴミ問題や新都心開発など主だった市の懸案は解消され、その路線を引き継げるのは行政経験の豊富な知念氏だと感じたからだという。彼の感覚では雄治氏の出馬はあまりに早すぎた。
■市長選は市のテーマで
一方、この市長選の意味合いを「政権への評価」や「新基地建設容認」と解釈されることには警戒心を隠さない。
「知事選と市長選の結果はセットで見てほしい。両方が民意なんですよ。基地問題の意思表示は知事選でしたけど、市長選は市のテーマで考えたいのです」
事実、わずかひと月半前の知事選では、那覇市民が今回の知念氏より8千票以上多い7万2600票余りをオール沖縄の玉城氏に投じたのだ。
それにしても、翁長政権誕生以後、東京と沖縄を行き来して取材を重ねてきた筆者には、今回ほど心苦しさを覚えた取材はない。展望の開けぬ辺野古問題でくじけずいつまで戦えるか。それとも国との関係正常化を、不条理をのみ込んで手にするか。ネガティブな二者択一を迫るのは他ならぬ政府や本土であり、そんな状況下の葛藤を、ナイチャー(内地人)の取材者に分析されたくない。そういった言外のいら立ちを感じた。
にぬふぁぶしの金城代表は、先細る“オール沖縄保守”についての質問中、故翁長氏による「県民が争うのを上から見て笑う人がいる」という言葉をふと口にした。
それはまさに、我々本土側に向けられた言葉に聞こえたのだった。(ジャーナリスト・三山喬)
※AERA 2022年11月7日号