
民主党政権下、県議会が全会一致で普天間飛行場の「国外・県外移設を求める意見書」を採択するなど文字通りのオール沖縄が存在した時期もあったが、中央の締め付けで自民党の大勢が離反してからは、少数の自民離脱組と国政野党がオール沖縄を維持してきた。だがそれも辺野古問題で手詰まり感が強まると、櫛の歯が欠けるように保守メンバーは減り、翁長前知事の死後、その流れは一気に加速した。
■行政経験豊富な知念氏
左右のバランスを崩したオール沖縄の“変質”こそ城間氏の不満であったのだが、左派側から見れば保守勢力の離脱こそがバランスを崩す要因であり、一部には「裏切り」という表現で城間氏をなじる声も聞かれた。
たとえばオール沖縄内の保守グループ「新しい風・にぬふぁぶし(北極星の意)」。代表者の金城徹氏はかつて「新風会」という那覇市議会自民党会派にいた。この会派の14人は結束して故翁長氏の知事当選を支えたが、いまもオール沖縄にいる旧新風会メンバーは彼だけだ。当の金城氏に古い同志が霧散した事情を尋ねても、「立場が違うと話す機会もなく、彼らのことはわからない」と多くは語らない。
雄治氏の母、つまり翁長雄志氏の妻・樹子さんは「確かに今回、向こうに行った後援会の人たちもいました」と認める。
「そもそもみなゴリゴリの保守。これまで翁長や雄治についてきてくれただけでもありがたいくらい。それでもね、(城間)幹子さんがあんな動きをしたことで、逆に最終盤、戻ってきてくれた人たちもいたんです」
だが結果は1万票以上もの大差での敗北。樹子さんは、当選した知念氏に基地問題への姿勢の明確化を求めたいという。
「人それぞれ濃度の差があるだけで、沖縄の人の気持ちは根本では一緒かもしれない。でも、小さな県にこれだけ基地が多ければ米軍の事件は今後も必ず起きてしまう。そんなとき、県民と一緒に戦えないリーダーではダメでしょう。彼はその点をいつかきっと問われるはずですよ」
敗北した息子・雄治氏については「保守は保守だけどゴリゴリじゃない。右だ左だとこだわっていては、オール沖縄はできないんですよ」とその立ち位置を代弁した。