
故翁長雄志氏の“直系”が対決した那覇市長選は、自公推薦を受けた元側近が翁長氏の次男に勝利した。「オール沖縄」勢力は今年の県内市長選で7連敗だ。AERA 2022年11月7日号の記事を紹介する。
* * *
「腹八分・腹六分」で沖縄県内の全首長が保革を超えて「辺野古新基地建設阻止」で団結した「オール沖縄」が崩壊の瀬戸際まで追い込まれた。県都・那覇市での敗北。しかもその敗者は「イデオロギーよりアイデンティティー」を唱え、保革共闘を実現した故翁長雄志知事の次男、雄治前県議(35)だった。
今年は県下11市長選のうち七つが集中する選挙イヤー。オール沖縄勢力は知事選と参院選で勝利したものの、市長選ではこれで7戦全敗だ。
■現市長の動きも影響
城間(幹子)那覇市長の動きは結果にどう影響しましたか──。敗戦の弁のあと記者にそう問われた雄治氏は「(影響は)あったんでしょうね」と述べ、「でもそれをどうこう言う気はない」と付け加えた。実際、城間市長の動きはこの選挙を複雑化させた。
翁長前知事とは中高の同級生。彼の那覇市長時代に副市長となり、2014年の翁長知事誕生時には、彼の後継市長としてオール沖縄の支援で当選した。
にもかかわらず5月の退任会見では、「自民対オール沖縄の構図は、那覇市ではなくてもいいのでは」と辺野古問題を争点化しない提案を口にした。9月の知事選ではオール沖縄陣営で玉城デニー氏の再選を支えたが、一方で腹心の副市長・知念覚氏(59)が自民・公明に接近することには異を唱えず、市長選直前に自公推薦となった知念氏を自らの後継候補と公表した。
知念氏本人も市長時代の翁長氏に、秘書広報課長などに引き立てられた人だ。つまり城間-知念ラインを支える中軸は、故翁長前知事の支援者とかなり重なり合う。自公はそこに乗って戦ったのだった。
告示日4日前、知念氏の事務所を訪問して旗色を鮮明にした城間氏は、翁長県政の副知事だった自民党離脱組の浦崎唯昭氏や安慶田光男氏の姿を見て「オール沖縄が出発した時の面々が並んでいる」と感慨を口にした。