ミッツ・マングローブ
ミッツ・マングローブ
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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「」について。

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 昨年に引き続き「猫特集」だそうで、今週は半ば無理やり猫について書いていこうと思います。「猫特集」ということは、表紙も猫で行くつもりなのでしょうか。いっそのこと作詞家の及川眠子(おいかわねこ)さんをグラビアで起用するぐらいの気概を見せてくれれば、猫熱の低い私のモチベーションも上がるというものです。

 考えてみれば、日本ほど「猫」に支配されている国はないかもしれません。国民的アニメであるドラえもんは「未来の世界の猫型ロボット」。国内でディズニーとタイマンを張り続けてきたサンリオのキティちゃんも、今や世界的な知名度を誇る猫です。1969年には皆川おさむさんが歌った『黒ネコのタンゴ』(原曲はイタリアの童謡)が空前の大ヒットとなり、80年代前半の「なめ猫ブーム」、「ゲゲゲの鬼太郎」の「猫娘」や「となりのトトロ」に出てくる「ネコバス」など、もはや人間以上にその多様性が認められていると言えるでしょう。

 もちろん欧米でも、「トムとジェリー」や「シルベスター・キャット」、「フィリックス」に「ガーフィールド」など、猫が主人公のアニメはたくさん存在しますが、それらはあくまで「人間界に生きる猫」の範疇を超えてはいません。日本でその規準を守っているのは磯野家で飼われている「タマ」ぐらいです。

 一方でイギリスには「Cats」という、究極の猫擬人化ミュージカルがあります。猫ならではの特性(柔軟な体・気まぐれな性格・夜行性・激しい恋・縄張り争い)は、確かに擬人化したくなるミステリアスな要素に富んでおり、もしこれが同じような内容で「Dogs」という作品だったら、ここまで世界的ロングランヒットはしなかったでしょう。

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