AERA 2022年11月7日号より
AERA 2022年11月7日号より

■経済無策が政権不信に

 岸田政権の危機は旧統一教会の問題にとどまらない。経済の再生は待ったなしだ。ロシアのウクライナ侵攻で資源高が加速。さらに日米の金利差が拡大して円安が進み、物価高が進行している。それでも黒田東彦日銀総裁は金利引き上げを全面否定。さらなる円安につながっている。黒田総裁が進めてきた金融緩和はアベノミクスの大きな柱であり、日銀が大量に買い込んだ国債価格に影響があるため、簡単には金利を上げられない事情がある。岸田政権の経済運営にアベノミクスが暗い影を落とす。

 岸田首相は、物価高に対応するためにも「大幅な賃上げ」を経済界に求めているが、賃上げは進まず、国民生活を苦しめている。経済無策が政権不信につながっていることは明らかだ。

 さらに、外交・安全保障である。中国共産党大会で総書記の3選を果たした習近平氏は、台湾統合をめざして日米両国に揺さぶりをかけてくるだろう。経済のデカップリング(分断)も辞さない米国と、経済成長には中国との貿易や投資が欠かせない日本との立場の違いを中国が巧みについてくるのは確実だ。中国は、延期となったままの習近平氏の国賓としての訪日を実現するよう求めてくるだろう。自民党内では反対論が強まっており、党内の意見対立につながる可能性がある。

 中国の軍備拡張や北朝鮮の核・ミサイル開発に対抗するための防衛費増額も、岸田首相にとって大きな懸案だ。5兆円余の防衛費を5年間で倍増させる計画で、来年度予算案では数千億円の増額が予定されている。財源はどうするのか。当面は「つなぎ国債」を発行して、来年度以降に法人税や所得税の増税で賄う案が検討されているが、増税には強い反発が必至だ。

■公明党は反撃力に慎重

 岸田政権は年末にかけて、国家安全保障戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の3文書を改定する。敵基地攻撃能力を「反撃力」と言い換えて、どういう表現で盛り込むか、台頭する中国にどう向き合うか、「専守防衛」の枠内でミサイルの配備計画をどう位置付けるか、など多くの論点がある。自民党内だけでなく与党の公明党にも「反撃力」などに慎重論があり、調整作業は難航しそうだ。逆風にさらされる岸田首相が与党内合意に向けて指導力を発揮できないようだと、政権はさらに失速するだろう。(政治ジャーナリスト・星浩)

AERA 2022年11月7日号より抜粋

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