室井佑月・作家
室井佑月・作家
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 作家の室井佑月氏は、公文書改ざん問題の意外な結末に怒りを隠さず論じる。

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 鈴木俊一財務相もまた苦しい立場に置かれてるのか。ぜんぜん同情できないが。12月15日の彼の会見を見て、そう思った。

 森友学園問題で公文書の書き換えを命じられ自死に追い詰められた、財務省近畿財務局の元職員赤木俊夫さんについて聞かれ、鈴木財務相は、

「自死に至ったことについて国の責任は明らかとの結論に至りました」

 と認め、こう続けた。

「そうである以上、いたずらに訴訟を長引かせるのは適切ではなく、また決裁文書の改ざんという重大な行為が介在している事案の性質などに鑑み、認諾するとの判断に至ったものであります」

 と、その口で、「今後、二度とこうした問題を起こさないよう……」と語った。

 いたずらに訴訟を長引かせるのは適切ではない? 国の責任が明らかな行為が、誰の指示で行われたのか、うやむやにしたいのだろう。それを二度とこうした問題を起こさないよう、という言葉につなげるのはおかしい。それなら、最後まで訴訟を続けるべきだ。

 国を相手に2020年3月、裁判を起こした俊夫さんの妻の雅子さんは一貫して、「夫が亡くなった原因、改ざんを誰が指示したのか、一番最初に指示したのは誰か、それを知りたい」といっている。国から提出された文書は大事なところは黒塗りで、俊夫さんがまとめたファイルは21年6月まで開示されず、そして「認諾」で突如終わりとなる。

 国が雅子さん側の言い分を認め、請求された約1億700万円全額を支払うと表明(税金です)、実質的な審理に入らないまま。12月17日の「朝日新聞」の社説に、

「追及を逃れるためなら何でもするということか。人間の尊厳を踏みにじるような政府の対応に、強い憤りを感じる」

 と書かれていた。その通りだとあたしも思う。

 どうもこの国を動かしている人間の中に、とんでもない独裁者がいるようだ。官僚も大臣も、その者の手足のようだ。

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