高い天井は、“新時代ロマンスカー”の標準仕様に(提供:小田急電鉄)
高い天井は、“新時代ロマンスカー”の標準仕様に(提供:小田急電鉄)
側窓は1枚4メートルという、破格のワイドサイズ(提供:小田急電鉄)
側窓は1枚4メートルという、破格のワイドサイズ(提供:小田急電鉄)

 車体は、新幹線の車両などにも用いられている「アルミ合金押出型材ダブルスキン構造」を採用し、軽量化が図られた。エクステリアは従来の質実剛健さから、穏やかさと柔らかさが融合し、丸みを帯びたデザインに変わった。色はシルキーホワイトをベースに、バーミリオンオレンジ、同系色のバーミリオンストリームの帯を配した、かわいらしい雰囲気だ。

 インテリアは展望席を除く一般客室をアーチ形のヴォールト天井にしたことで、広々とした空間を演出。リクライニングシートは展望席を除き、窓側に5度向けており、眺望を重視した。3号車には「サルーン」という4人用セミコンパートメントを設け、家族連れやグループ客に対応した。

 贅を尽くした50000形VSEは大好評を博し、2006年に鉄道友の会ブルーリボン賞を受賞。のちに岡部憲明アーキテクチャーネットワークが手掛けた60000形MSE(「Multi Super Express」の略)、70000形GSE(「Graceful Super Express」の略)が登場しても、50000形VSEはフラッグシップトレインとして、四半世紀以上の長きにわたり輝きを放ち続けるものと思われていた。

■短命引退の決め手は“類い稀なる技術”

 50000形VSEが先輩の30000形EXE(「EXcellent Express」の略。リニューアル車は「EXEα」)より早く現役を退くことになったのは、意外にもその“類い稀なる技術”が影響している。

 小田急によると、「連接構造や車体傾斜制御などに特殊な構造を多く採用しており、経年劣化に伴う主要機器の更新が難しく、性能を維持できない」ことが引退の理由だという。

 ほとんどの特急ロマンスカー車両は、連接構造が特殊ながらも、30年以上にわたり活躍した。しかし、50000形VSEはボルスタレス台車(現在の小田急では標準的な台車)を連接構造用にカスタマイズした、いわば特注品。さらに乗り心地と快適性を向上させるため、車体傾斜制御、台車操舵制御を採り入れたことで、特殊であることに加え複雑な構造と化したのである。

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