大倉孝二(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
大倉孝二(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)

「しかも困ったことに、自分の書いたセリフだと全然頭に入らない。特にジョンソン&ジャクソンでは、セリフを間違えがちです。本来なら僕は、舞台に出るだけの仕事なのに、ジョンソン&ジャクソンでは、いろんなことをこなさなきゃいけないから、気になることがありすぎて、全然セリフに集中できない。そんなね、いろんなことできる人間じゃないんです」

「制作作業に向いてない」「ストレスフル」と愚痴りながら、それでも自分に負荷をかけ、新しいことに挑戦し続けることは、表現者としての延命につながる気がするのだが。

「いや、本当に負荷以外の何物でもないんですよ(苦笑)。もうちょっと肩の力を抜いて、楽しくできればいいけど、とにかく大変なんでね……」

 今回は、チラシのイラストも大倉さんが手がけた。アフロヘアの男女5人がそれぞれ違う方向を向いているイラストは、人生の苦みとユーモアとが絶妙に同居しているようにも見える。

「人に頼んだりする時間を考えたら、これが一番手っ取り早いから自分で描いただけ。なぜこういうイラストなのかを聞かれても説明できないので、お手に取った方それぞれに解釈してもらえたらそれでいいです」

 今どき珍しい後ろ向き発言の連続は、本音なのか照れなのか。「何でやってるのかを説明するのは本当に難しい」としながらも、最後に、「それはやっぱり観に来てくださるお客さんがいるからなんです」と結論づけた。

「僕からすると、お客さんに『観てよかった』と思ってもらえるのが、一番ありがたいですね。自分の書いたストーリーとかセリフとかを人に見せることは、恥ずかしいとしか思ってないので、これで楽しんでもらえなかったらいよいよ救われなくなってしまう。やりたくてやって、楽しんでもらえなかったらそれはしょうがないけど、やりたくないのにやって楽しんでもらえなかったら、何の救いもないじゃないですか」

(菊地陽子 構成/長沢明)

週刊朝日  2022年11月4日号より抜粋

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