元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
【写真】今見るとレトロだが、昔はこれが最先端だった…稲垣さんが愛用していたバターケース
* * *
実家では父が一人暮らし。もう決して使うことはないであろう、というか本人も存在すら忘れているであろう大量のものに囲まれて暮らしている。戦争とその後の経済成長を経験し「モノがない苦しさ」と「モノを得る喜び」を浴びてきた世代ゆえ、手放すことが非常に苦手なのだ。
というか、そもそも捨てるという発想がない時代をずーっと過ごしてきて、今さら急に断捨離だ終活だと言われても困るのだろう。で、私はといえば50歳で会社を辞め家賃圧縮の必要に迫られ、仕方なく大量のモノを処分したら思いがけず人生好転。なので実家に行く度、どうしてもあふれるモノが気になって仕方ない。でもしつこく捨てろとか処分しろと言うのもイジメのようで気が引ける。