小川:書いている時に意識していたわけではなかったんですが、クイズに勝つことだけをストイックに追求する三島と、テレビタレントとしての振る舞いに長けた「クイズ王」の本庄は、伊沢さんのクイズプレイヤーとしての二つの顔を表しているのかもしれません。そう読む人がいてもおかしくないなと、書き終えてから感じました。

伊沢:実は、僕もそういう視点で読んじゃいました(苦笑)。素晴らしいなと思うのは、どちらが良いとか悪いとかじゃなくて、三島という冷静に物事を見られる人物を通して、偏らない見解が示されているんですよね。クイズにはいろいろな思想があるよ、と。

小川:フェアに書きたいという気持ちはありました。僕はクイズ界の部外者ですし、ジャッジできる立場にはないですから。

伊沢:フェアという言葉はこの小説にぴったりかもしれない。小川さんというクイズ界にとって味方でも敵でもない人が、クイズにまつわる諸々の論点をフェアに提示してくれた。ただ、大本の「クイズとは何か?」という問いにどう答えるかは読者に委ねられているんです。

伊沢:三島は人生を懸けてクイズをやっているわけですけれども、クイズの知識をきっかけに人生における様々な出会いを楽しんでいるし、人生をきっかけにクイズを楽しんでもいる。知識を得る純粋な喜びが見て取れます。

小川:クイズプレイヤーであるかどうかにかかわらず、どんな人であれ、知ることの喜びってあるんじゃないか。知識が増えることで人生は豊かになることを肯定したい、という思いがありました。

(構成/ライター・吉田大助)

AERA 2022年10月24日号より抜粋

※なお、小川哲さんは10月28日(金)、ブックファースト新宿店で『君のクイズ』のイベントを予定している。リアルでの参加、オンラインでの参加も受け付け中。

http://www.book1st.net/event_fair/event/page1.html#a_1701

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