10月29日からユーロスペースほか全国順次公開
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『ランブラーズ2』(山下敦弘監督)、『はい、泳げません』(渡辺謙作監督)を経てこの映画に臨んだ影山だが、彼女の演技に「どうなりたいのか。どこへ行くのか。未知の自分へとさすらうひとりの女性を全身的に表現する」と詩人福間健二がコメントを寄せた。「その鮮度ある魅力を、追跡する監督サトウトシキは作品の生命にしている」

 先ごろ亡くなった脚本家の小林政広と組み、『タンデム』『迷い』『今宵かぎりは…』などを世に送り出してきたサトウ監督は「何者かであることと何者でもないこと。そんなことに思いを巡らせる映像化の旅だった」と本作を振り返る。

 相手役マサルは原田喧太。彼の醸し出す孤高が物語に合うと直感したが、ギタリストながら父原田芳雄を髣髴(ほうふつ)とさせる不穏さが印象的だった。彼の父親の遺作『大鹿村騒動記』原案を手掛けたのは12年前だが、その奇縁を感じざるを得ない。

「どうやらアタシはふわふわ漂うほうがあってるみたい」と仁絵の呟きがキャプションに施された『さすらいのボンボンキャンディ』。都市的に虚無で外連(げれん)がなく、本年度ノーベル賞作家A・エルノー原作の仏映画『シンプルな情熱』ばりの高純度恋愛映画となった。

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞。新刊「松本隆 言葉の教室」(マガジンハウス)が好評発売中

週刊朝日  2022年10月28日号

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