結局、私の秋刀魚を次男に譲り、4人は先に「頂きます!」。グリルに秋刀魚を1尾入れ、5年くらいに感じた12分後、私の秋刀魚が焼けた。脂が滴り落ちる皮の裂けたところに醤油をひと垂らし。そこへ大根おろしをのせて、一緒に箸でつまみご飯と共にかっこむ。美味い。長男は「はらわたが美味いよね」などと大人びたコトを言い、上手に食べている。見れば頭と尾っぽと中骨だけを残し完食。秋刀魚を食べさせると子どもの成長が分かる。しかし、秋刀魚のはらわたは美味い。「秋刀魚のはらわただけのチューブ」があればいいのに。好きなだけご飯にはらわたをかけて食べられたらどんなに幸せか。これに関しては一度も賛同を得られたことがないのだが、食品会社の開発部の方、いかがでしょうか?
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!
※週刊朝日 2022年10月28日号