経産省の原子力小委員会・革新炉WGに提出された「次世代軽水炉」のイメージ
経産省の原子力小委員会・革新炉WGに提出された「次世代軽水炉」のイメージ

 炉心溶融が起きた場合に、溶け落ちた核燃料を受け止める「コアキャッチャー」という設備も付けているが、これも日本にはなかっただけで海外では実用化済みだ。

 パッケージを変えただけの革新軽水炉だが、有力な建設候補地は「関西電力の美浜原発(福井県)4号機」だと松久保氏は見る。日本海側だから北朝鮮のミサイル攻撃の標的になりかねないが、それは見て見ぬふりか。

 第6次エネルギー基本計画では、「議論を深めていくための参考値」としながらも、2050年時点での総発電量における電源比率は再生可能エネルギーが50~60%、水素・燃料アンモニア発電が10%、原発はCCUS(二酸化炭素回収・利用・貯蔵)付き火力発電と合わせて30~40%と示されている。

「そのうち原発の比率は20~30%になると考えられ、100万kW級の原発が最大75基必要な計算になる。革新軽水炉が1基建つのが30年代半ばというのに、そんな新設・増設などあり得ない話なんです」(松久保氏)

 岸田氏は自著『岸田ビジョン 分断から協調へ』(20年刊)で「再生可能エネルギーを主力電源化し、原発への依存度は下げていくべきだ」と記しているが、変節した理由すら説明しようとしない。政治ジャーナリストの角谷浩一氏が言う。

「本に書いたことなど覚えていないのでしょう。これほどの政策変更をするなら、少なくとも直前の参院選で国民に信を問うべきでした。元経産事務次官の嶋田隆・首相秘書官の振り付けもあるでしょうが、今やるべきことなのか。岸田氏が何を目指しているのか、全く見えてきません」

 ビジョンなき宰相は、去るべきではないか。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2022年10月28日号

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