■「慈悲の心に触れて」
「若い目線から見た仏教です。これまでお寺とご縁のなかった人に対しても、相手の苦しみをその身で感じるという仏教本来の慈悲の心に触れてもらいたい」
と稲田さんは考えている。
誰もが気軽に訪ねる場所にしようと努力する寺もある。その一つ、光明寺(東京都港区)は本堂前のテラスを「神谷町オープンテラス」として開放。飲食類の持ち込みは自由で、昼時にはコンビニで買ったおにぎりなどを手に続々と人がやってくる。
昼すぎには本堂での「おつとめ」にも参加でき、店長で僧侶の木原祐健さんがじっくり話を聞く「傾聴」(要予約)も。
「お寺に縁のある方はもちろん、オフィス街でもあり、地域の人にお寺の存在を知ってもらいたいと考えました。心も体もふと安らぐ機会を作ることで、まずはお寺を身近に感じてほしい」(木原さん)
11年の東日本大震災後には、僧侶や神主、牧師やカトリックのシスターなど宗派を超えてつながったメンバーによる悩みを聞く場も多数生まれた。浄土宗正覚寺(京都市)住職でジャーナリストの鵜飼秀徳さんは言う。
「日本は多様な宗教・宗派が混在している大らかな宗教性を持つ国です。けれど、仏教徒でありながら、旧統一教会と選挙のために接点を持つなど節操がない政治家もいる。それが、安倍元首相の銃撃事件の遠因にもなった。日本人の宗教リテラシーを高めなければならないと思います」
(編集部・古田真梨子)
※AERA 2022年10月24日号より抜粋