10月8日、ケルチ海峡にかかるクリミアとロシアをつなぐクリミア橋で爆発があり、一部が崩落した(写真:アフロ)
10月8日、ケルチ海峡にかかるクリミアとロシアをつなぐクリミア橋で爆発があり、一部が崩落した(写真:アフロ)

 ロシア軍は解放者として歓迎されるはずだという思い込み。そして、謀略を重視し制空権や兵站といった軍の運用の基本を軽視した戦術は、ソ連国家保安委員会(KGB)出身で軍事に疎いプーチン氏の弱点を露呈した。

 首都キーウの攻略に失敗したロシア軍は、本来得意なはずの、平原を舞台にした領土の奪い合いとなったウクライナ東部の戦いでも精彩を欠いた。正規軍、チェチェン兵ら国家親衛隊、傭兵部隊「ワグネル」、ドネツク、ルハンシクの地元部隊がてんでばらばらに、時に足を引っ張り合いながら戦っていることが、混乱につながっている。

 部分動員をめぐる騒動は、忖度(そんたく)文化にどっぷりと浸かったロシアの官僚機構の非効率性に起因する。実態を伴わない4州の編入は、ロシア憲法ひいてはロシアという国そのものの権威を大きく貶めた。

「強いロシア」の再建を歴史的使命と思い定めたプーチン氏に、20年余に及ぶ自らの統治が、実際にはロシアをすっかり弱い国にしてしまったという冷酷な現実を受け入れる冷静さが残されているだろうか。それとも、ロシアの「強さの源泉」だと繰り返し公言してきた核戦力という最悪の選択肢への誘惑に駆られているだろうか。(朝日新聞論説委員・駒木明義)

AERA 2022年10月24日号より抜粋

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