──あなたの王室に対する姿勢は? 将来的に王室はどうなっていくと思いますか?
「いまは転機を迎えていると思う。エリザベス2世時代にも終わりが来るし、新しい王が生まれる(編集部注:取材は8月)。この映画の中で触れた問題は、将来へと引き継がれる。主たる点は、民衆が王室に何を望むかということだ。そこにはパラドックスがある。王室が庶民的になってほしいか、すべてオープンにして真実の姿を見せてほしいか、僕らと同じように振る舞ってほしいか? それとも庶民とは距離を置き、我々と違う神秘性を保った特別な人たちだと信じたいか──? 実のところ僕は両方を望んでいる。それは不可能だ。だが、ひょっとしたらダイアナは生前、その両立を成し遂げていたのではないかと思うんだ。二つの世界をうまく綱渡りしていた。だから庶民の共感を得ることに成功し、どこへ行っても王族としてのスター性も振りまいてくれた。それがダイアナの魅力の一つではないかと思う。パラドックスの中で、庶民がまさに望んでいるものを提供することができたのではないだろうか」
(在ロンドン=高野裕子)
※週刊朝日 2022年10月14・21日合併号