世界中に衝撃を与えたダイアナ元皇太子妃の死から25年。アーカイブ映像だけで作り上げたドキュメンタリー映画「プリンセス・ダイアナ」が公開された。アカデミー賞にもノミネート歴を持つエド・パーキンズ監督に聞いた。
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本作は、チャールズ皇太子との結婚から事故死までの16年間を、主に英国のニュースやインタビュー映像、タブロイド紙面など、時代にそってアーカイブ素材で描いている。当時の国民の反応や政治経済状況も織り込み、ダイアナ妃個人だけでなく彼女を取り巻く状況を追うことで、見る者はともに時代を歩んでいるかのように体感する。
ダイアナ妃への異常なまでの関心は、その後のパパラッチを過熱させ、セレブウォッチに火をつけるきっかけともいえる。1980年初頭、どん底景気にあった英国社会で、華やかなロイヤルウェディングは、暗雲立ち込める日常から英国民がしばし逃避できる大祝賀だった。それは同時に、ダイアナ妃の悲劇の始まりでもあった。
──すでに数多くのダイアナ妃に関するドキュメンタリーがある中で、あえてもう一本作りたいと思った動機は?
「作るとしたら、異なる視点で、新しく提供できる何かが必須だった。過去の作品は、ダイアナの頭の中に入り込む試みが大半だった。だが、彼女の実際の気持ちは分からないから、究極的に言えばそれは『仮説』だ。この映画ではカメラの向きを180度変えて、我々庶民を映し出そうと試みたんだ。庶民とダイアナの関係について、王室の存在、セレブ文化やセレブウォッチといった全般について問いかけている」
──私自身どれも記憶にある映像ばかりです。なぜ世界中のあれほど多くの人が、直接関係のない彼女の死に感情的になったのかは興味深いです。
「僕自身もそう思った。ほとんどの人はニュースを通してしかダイアナを知り得なかった。にもかかわらず、多くが彼女に関する出来事をパーソナルなものとしてとらえていた。この映画の始まりは、当時11歳だった僕の困惑にあるんだ」