日米の金利差の拡大から進んだ「円安」の評判がすこぶる悪い。物価高を招く悪者だと政府は円安阻止に動いたが、「円安」はそんなに悪いことなのだろうか。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。(全3回の2回目)
* * *
過去に比べて円安メリットが減っていると言われている。欧米との貿易摩擦が起きた1980年代から90年代初頭に比べて現在は、海外での現地生産や海外からの部品調達の比率が増えている。そのため円安効果が減少しているというのだ。また輸入に頼るエネルギーなどの資源や食料品の高騰が円安メリットを減殺する。
しかし、経済学の標準的なモデルではそれでもなお日本経済をトータルに見れば円安メリットがあるということなのだ。日銀の黒田東彦総裁もこの夏の参院選前まで「円安は全体としてはプラス」という考え方を示していた。
それは最近の企業業績をみても裏付けられる。2022年3月期決算はコロナ禍にもかかわらず上場企業の3割が最高益を記録した。上場企業全体では4期ぶりに最高益を更新した。
昨年春以降に各国でロックダウンが解除されはじめ、需要が膨らんだことと円安が輸出企業の利益を押し上げたためだ。この春以降に円安がさらに進行したので、足元の好調ぶりは続いている。