AERA2022年10月10-17日合併号より
AERA2022年10月10-17日合併号より

■課題は企業経営者の「積極姿勢」の欠如

 今年4~6月の法人企業統計によると全産業(金融・保険業を除く)の営業利益は前年同期比13.1%増、経常利益は前年同期比17.6%増といずれも額は過去最高だった。

 トヨタ自動車の場合、対ドルレートが1円の円安になると営業利益で450億円増えるという。7月以降も円安が進行しているので、今年9月期の企業決算は過去最高を更新する可能性もある。

 日本経済の課題は企業業績の伸びに比べて設備投資や賃金の伸びが小さいことだ。低金利に円安という追い風が吹いているにもかかわらず、企業経営者の積極姿勢、いわゆるアニマルスピリッツが足りないことが日本経済にとって大きな課題なのだ。それが世界の中で日本だけが「失われた30年」を歩んだ元凶だと思う。

 本来ならば現在のような円安という自国通貨安は産業競争力に下駄をはかせるので、米国などの諸外国からバッシングを受けるはずだ。

 だが今回の円安局面で日本へのバッシングはない。なぜなら円安ドル高の原因が自国の金利引き上げという国内事情だからだ。米国にしてみれば国内の物価高を抑えるために金利を上げた結果の円安ドル高だから日本に八つ当たりはできない。(経済ジャーナリスト・安井孝之)

AERA 2022年10月10-17日合併号より抜粋

>>【1回目の記事】円安は本当に悪なのか? 「日本経済を成長軌道に乗せるチャンス」利点にも注目

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安井孝之

安井孝之

1957年生まれ。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京、大阪の経済部で経済記事を書き、2005年に企業経営・経済政策担当の編集委員。17年に朝日新聞社を退職、Gemba Lab株式会社を設立。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。

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