AERA2022年10月10-17日合併号より
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 近ごろ「円安」の評判がすこぶる悪い。物価高を招く悪者だと政府は円安阻止に動いたが、「円安」はそんなに悪いことなのだろうか。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。(全3回の1回目)

【グラフ】年初来の対ドル円相場の推移はこちら

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 政府と日本銀行が円安ドル高に歯止めをかけようとして踏み切った為替介入の翌日、9月23日の全国紙の朝刊1面は「24年ぶり円買い介入」という大きな横見出しで揃った。久々に為替のニュースが各紙の1面を飾ったものだから「日本経済にとって相当大変な事態が起きたぞ」と読者の多くは受け止めたに違いない。

 日本経済新聞は「輸入物価の高騰で家計の負担増につながる円安を阻止する姿勢を示した」と書き、朝日新聞は「物価高の要因となっている円安が一層進めば、日本経済に悪影響があるとみて強い手段に踏み切った」と書くなど各紙が「円安は悪い」という前提で記事が作られていた。

 確かに物価高が広がっている。9月20日に発表された8月の消費者物価指数は71%の品目が前年同月比で値上がりし、全体の値動きを示す総合指数は前年同月比3.0%の上昇だった。変動が大きい生鮮食料品を除くと2.8%の上昇で消費税が増税された時期を除けば1991年9月(2.8%)以来の高い水準だ。

 昨年来、コロナ禍から回復しつつあった主要国の経済が上向き、需要が膨らんだ。それにつれて半導体不足などが顕在化し、供給が追いつかない状況となり、物価上昇が続いていた。

 そこに今年2月のロシアのウクライナ侵攻から原油などの資源価格や小麦などの穀物価格も高騰し、追い打ちをかけている。

 その中でこの春から円安が進んだ。日米の金利差が広がり始めたためだ。

 3月に米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を利上げし、その後も5月、6月、7月、9月と利上げを続けた。まさに米国は物価高に苦しんでいる。8月の消費者物価指数は前年同期比8.3%増と約40年ぶりの水準だ。

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