
26歳にして、しっかりとした“言葉の世界”を持っている橋本愛さん。12歳で芸能界に足を踏み入れ、たくさんのしんどさも経験した。経験によって獲得した自信は、声優に挑戦したその声にも表れる。
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芝居の世界に足を踏み入れたばかりの14歳のときは「あれをやりたい」「これをやりたい」という意思は皆無だった。ところが経験を重ねるうちに「やってみたい」と思う仕事が生まれた。“声優”だ。元々漫画やアニメが好きだったこともあり、「年齢も性別も人種も関係ない役ができるのは楽しそうだな」と思うようになった。
そんな彼女が、この秋話題になること必至のアニメ映画のヒロイン役で、念願の声優を務めた。「僕が愛したすべての君へ」(通称“僕愛”)と「君を愛したひとりの僕へ」(通称“君愛”)は、見る順番で結末が大きく変わるふたつのラブストーリー。並行世界を行き来することのできるひとりの少年が、それぞれの世界で、別々の少女と恋に落ちる。橋本さんがヒロインの和音を演じたのは、切ない余韻を残す“僕愛”。両作で主人公の暦を演じるのは宮沢氷魚さん。幸せな余韻を残す“君愛”のヒロイン・栞の声は、蒔田彩珠さんが担当する。
「ふたつの物語の、どちらを先に見るかで、作品への印象が全く違うというアプローチが新しいなと思って、すごく興味を惹かれました。面白いのは、“僕愛”と“君愛”とで、暦のキャラクターが大きく違うことです。“僕愛”の暦は、両親の離婚後、母親と一緒に暮らしていて、“君愛”の暦は、父親に引き取られる。そのことが、暦自身の人格形成にすごい影響を及ぼしているんです。たった一つの選択で、全然違う人生になることがあるのが、わかりやすく表現されているし、こんなにも違うのに、根っこの部分は同じなんだというのが、面白かったですね」
声優をやりたいと思っていた頃は、どちらかというと栞のようなキャラクターを演じることをイメージしていた。可愛らしくて、多くの男の子が憧れそうな、いかにもヒロインらしい女の子。