リラン(左)とヤマニンバッスル
リラン(左)とヤマニンバッスル

 石井社長は「僕は競馬の方はそんなに興味がないから。宣伝しようとは思いませんでした」と説明する。

 そんな石井社長がテイオー産駒を引き受けるきっかけを作ったのは、「トウカイテイオー産駒の会」の早川代表だ。

 91年のダービーでトウカイテイオーの虜となった早川さん。引退の1週間後には、北海道の放牧地に見学に行ったほど。早川さんは、テイオーの父である「皇帝」ことシンボリルドルフが2011年10月に亡くなった時に危機感を覚えた。

「いつかはテイオーも亡くなる日がくる……。なんとも言えない焦燥感に襲われました。そこで産駒を応援することで、テイオーのことをPRしようと思ったんです。決して忘れられないように。有志と『皇帝 帝王 伝説』という文字とテイオーのイラストを入れた横断幕を作って、産駒が走る競馬場のパドックに掲げました。JRA、地方、全ての競馬場を協力して回りました」(早川さん)

 テイオーの子も次々に引退していく。早川さんらは、産駒たちに幸せな“第2の馬生”を送ってほしいと願った。特に気になったのは、川崎競馬で走っていたヤマニンバッスル。

「テイオーに顔がよく似ているんです。流星がそっくり。これからもそばにいて欲しいと思い、親しい厩務員さんに間に入ってもらって、厩舎を訪問し想いを伝えました。『そんなに好きで引退後のことを考えてくれているのなら』と、引き取りの話が進んだんです」(早川さん)

 13年6月のレースを最後に引退したヤマニンバッスルを引き取り、乗馬のトレーニングを開始。ゴールを目指してひたすら走る競走馬と違い、乗馬では動かないことも要求されるなど、動きがまったく違う。そのため入念なリトレーニングが必要なのだ。引き取って2カ月後にトウカイテイオーが亡くなったこともあり、早川さんはバッスルをテイオーの忘れ形見のように感じたという。

 十分にリトレーニングを積み、乗馬として活躍できるようになった17年のこと。

「ちょうど赤城乗馬クラブさんが新しい馬を必要としていると聞きまして、お願いしたんです」(早川さん)

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