■問題の着地点は暗黙ルール化?
角谷:外為法違反や脱税にあたる事例がなかったかどうか。私はこの問題を政治の力で解決するのは無理だと思っていますが、仮に違法行為があったとしたら厳正に取り締まるべきで、警察にはしっかり仕事をしてほしい。
有田:当初、警視庁の幹部から捜査は外為法違反から入ると聞いていました。順番に説明しますと、95年秋にオウム真理教の次は統一教会を摘発するということで、警察庁と警視庁の幹部に呼ばれて、霊感商法の手口などについてレクチャーを依頼されました。10年後の05年に警視庁の幹部と居酒屋で飲む機会があったので、摘発しなかった理由を聞くと「政治の力だ」と答えたのです。
しかし、09年の新世事件で教団は衝撃を受けます。警視庁公安部は、姓名判断で不安をあおって高額な印鑑を買わせたとして、印鑑販売「新世」の社長らを特定商取引法違反で逮捕します。教団の渋谷教会など関連施設が家宅捜索を受けました。教団は本部教会が摘発される日が来るかもしれないとの危機感を抱いたことでしょう。こうした状況下で、警察に強い国会議員への働きかけなどの「対策」も行われたと推測します。実際、10年から警察の捜査はピタリと止まった。
角谷:ただ、有田さんに言った「政治の力」に屈したことに忸怩たる思いがあって、公安部は水面下でいまも情報収集は続けていると聞いています。
有田:今後、統一教会の問題はどう展開すると思いますか。
角谷:いま、宗教法人法に基づく解散命令の申し立てを政府に求める声が出始めています。けれども仮に宗教法人として解散しても税制優遇がなくなるだけで、団体は維持できるし、活動もできる。オウム真理教解散後のアレフと一緒で、解決には結びつかない。
有田:確かに解散命令を出しても、日本からお金を収奪している構図を崩さない限り何も変わりません。統一教会は「わが法人は収益事業を一切行っていない」と言いますが、信者の献金にしても教団に入るのではなく韓国などに送られている。いま7、8割は現金で運んでいます。韓鶴子総裁には2、3割しか渡っていなくて、実権を握っているのはユンヨンホ・世界本部長です。
角谷:フランスの反セクト(カルト)法のような法整備をすべきとの主張もありますが、何がカルトで何が良い宗教かを国が認定することになり、それ自体、政教分離の原則に反する。統一教会と関わりを断つというのなら、政教分離を明確にするためにも宗教団体は選挙に関われないようにする法律をつくることです。立法が無理ならば、国会決議をして暗黙のルールにする必要があります。
(構成 本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2022年10月7日号より抜粋