
■政治の私物化が特質
安全保障政策をめぐっては、13年の特定秘密保護法の制定で国民の危機感が高まりました。14年には集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更に踏み切り、15年に先述の安保法制が制定されます。これにより、その気になれば自衛隊を全世界へ派兵できるようになりました。
こうした安倍政治の特質を一言で表せば、「政治の私物化」です。モリカケサクラに留まらず、文書改ざんや統計操作、虚偽答弁もありました。その総仕上げが国葬です。仰天したのは、安倍さんの家族葬に自衛隊の儀仗(ぎじょう)隊が参加したことです。自衛隊の私的利用でしょう。
国葬に対する国民世論は時間を経るほど、「反対」が優位になっています。
私たちの反対署名が国民の分断をあおっていると批判する人がいるようですが、その逆、国葬の強行が国民の分断をあおっているのです。こういうのを本末転倒と言います。私たちは、民主的手続きも経ずに国論を割って対立をあおっている国葬に反対しているのです。
英国民の多くが喪に服した9月19日の英エリザベス女王の国葬と、安倍さんの国葬に対する日本国民の反応の違いが際立ちます。
私たちの署名活動には、「自分たちの怒りの声の受け皿を作ってくれた」と感謝の声が数多く寄せられました。
いま、国葬に賛成しているのは、自民党の岩盤支持層のみです。英国首相だったサッチャーさんが亡くなったときも国葬は行われていません。国家元首でもない安倍さんを国葬にするという国際常識とのギャップは、英国女王の国葬との比較で一層鮮明になったのではないでしょうか。
日本では今回の国葬に限らず、国民世論と政治の乖離が拡大しています。にもかかわらず、国政選挙の投票率は5割前後。投票率が低いほど政治家は組織票に依存する傾向があります。無党派層の人たちが投票に行き、投票率があと20%上がれば政権を交代させることができます。私たちはいつまで政治の劣化を許容し続けるのでしょう。投票に行かない人も安倍政権の失政を追認する共犯者です。「寝た子」に起きてもらうしかありません。
(構成/編集部・渡辺豪)
※AERA 2022年10月3日号
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