斉加尚代監督

ボラ なぜなら韓国社会に物を言い続け、良くなるよう努力しているので、私ほどの愛国者がどこにいるのかと思います(笑)。愛しているからあなたがすることは全て正しい、これは完全な愛ではなく、その人が良くなるためには忠告もし、叱り、惜しみないケアも与えるのが愛だと思います。

斉加 私もその意見に賛成で、社会を良くしていくためには、異議や疑問を呈する人たちがいるからこそ変わっていくと思うんです。そこが政治の言葉によって、黙っていろという圧力が充満していくのは、とっても社会にとって不健全なことだなと思います。

ボラ 私は完全に「アンチコリアン」ですね、韓国の基準で見れば。正規教育課程を中退したんですから。でも私は中退し自らが選んだ学びによって、学ぶとはこういうことなんだと、身に染みて経験したと思います。自らのニーズで本を読み、勉強をし、大学や大学院に行って、自分で映画を作りながら、疑問に対する答えを探していく過程が面白いんだとわかったように思います。ですから、私は教育というものは、人々にそういう気付きを与えなければならないと思うんです。

「教育と愛国」も私の映画もそうですが、国家とは何かについての質問を投げ続けている。私は国家というものは、ある決まった教育に従い、Yesと言う人たちだけではなくNoと言う人たちも全部受け入れることができなければならないと思います。

斉加 ボラさんは高校時代に東南アジアに一人旅に出られて、そのときの体験を参戦軍人だったおじい様とも話された。それが「記憶の戦争」につながっているのでしょうか。

ボラ ベトナム戦争について、韓国の教科書では本当に短く紹介されるだけです。私が覚えているのは、朝鮮戦争後、非常に貧しかった韓国がベトナムに兵を送り、外貨を稼ぎ、韓国が成長できたという非常にポジティブな部分だけです。韓国では歴史を学ぶ時、韓国人は被害者で日本は加害者だ、韓国人は一度も他国を侵略したことがない善良な民族だといつも教えられます。

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