キッシンジャー氏は強い口調で言った。続くゴルバチョフ氏は、
「私も、日本は戦争をしない、平和な国であり続けてほしいと願っている。それは私だけでなく、世界のほとんどの人々がそう願っていると思いますよ。特に、日本は非核三原則を守っていて、核兵器を持っていない平和な国です。自分の国が核兵器を持っていて偉そうなことは言えないのだけれども、私は、世界は核兵器廃止に向かうべきだと思っています」
と、はっきりとそう強調した。その「核兵器廃止」の主張について、キッシンジャー氏に確かめると、氏も同意した。
中曽根氏は、キッシンジャー、ゴルバチョフ両氏が、日本の憲法改正に反対したことに「困った、困った」と言って、首を振り続けていた。そして、「あなた方の国はいずれも戦争ができる国で、現にやっているじゃないですか」と中曽根氏が問うと、
「だから、米ソ首脳会談でそういう事態を根底から変えたのです」
とゴルバチョフ氏は強調した。
冷戦終結……。だが、それから30年を経て、ロシアがウクライナに軍事侵攻し、台湾有事もリアリティーを帯びている。
こんな時期だからこそ、キッシンジャー、ゴルバチョフ両氏とのシンポジウムをやりたいのだが、それもかなわなくなってしまった。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年9月23・30日合併号