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 書評家・長瀬海さんが『ペアレントクラシー 「親格差時代」の衝撃』(志水宏吉、朝日新書 891円・税込み)を読む。

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「ペアレントクラシー」とは、親の富と願望によって子どもの生き方が決定づけられてしまう現在の社会のありようを指す概念だ。自由なはずの子どもの人生を、親がみずからの価値観で縛り付ける。子どもの運命の操縦桿を握る親の握力が次第に強まってきているのが現状なのである。

 著者は社会がペアレントクラシー化する要因に、新自由主義的な教育政策の拡大があると指摘する。学校選択制の導入や新たなタイプの学校の設置。教育の選択の幅が広がるなか、親たちの競争心は一気に燃え上がった。だが、親の気概はやがて不安に変わり、焦りと強迫観念を生む。

 その結果、親の経済力が子どもの学力に強い影響を与える、新たな格差社会が誕生した。本書は、そんな社会のメカニズムを実証的に暴き出す。子どもの本当の幸せとは何かを考えるために読まれるべき一冊だ。

週刊朝日  2022年9月16日号