西京極大門ハイツ(2016年撮影、提供=西京極大門ハイツ管理組合法人)
西京極大門ハイツ(2016年撮影、提供=西京極大門ハイツ管理組合法人)

 建物と住人、二つの老いが進む中で、これからのマンションには先を見据えた計画がいっそう必要となる。どんな視点で計画を立て、どのように管理していくべきか。建て替えまで見据えた綿密な計画を立て、知恵を絞って再生につなげている京都のマンションに足を運び、秘訣を探った。

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 京都市右京区、最寄り駅から徒歩10分ほどの住宅地にある築46年の分譲マンション「西京極大門ハイツ」。鉄筋コンクリート造7階建て、全190戸の決して新しくはないマンションだが、業界ではちょっと知られた存在だ。

 管理会社に管理業務を委託しているマンションが圧倒的に多い現在、西京極大門ハイツでは築12年目、1987年に「管理組合法人」を立ち上げ、区分所有者である住人たちの手で自主管理を行ってきた。その中で培われてきたのが、「自分たちの資産は、自分たちの手で守る」という強い意識だ。

 きっかけは、1回目の大規模修繕工事の時だった。最初の10年は管理会社に管理業務を任せていたが、いざ工事の段階になった時、積立金が必要額の1割もたまっておらず、金融機関の融資でしのぐ苦い経験を味わった。「二度と同じことを繰り返すまいと思った」(西京極大門ハイツ管理組合法人・佐藤芳雄理事長)と、この経験が転機となり、管理組合を法人化し、自主管理の道を選ぶことに。同時に、建物の老朽化を克服し、長く住み続けられるマンションにするために、修繕計画にとどまらない「総合計画」が必要だと考えた。

 そこで策定されたのが、長期修繕計画の発展形ともいえる「まちづくりマスタープラン」だ。最初に策定されたのが91年、築16年目の時に作られた20年計画で、20年後には高齢の居住者が増えることを見据え、どう組合運営をしていくのかを一冊にまとめた。長期計画ゆえに、物価の変動も考慮し、過去10年間の物価上昇率を踏まえ、3.5%の物価スライド制を採用。10年ごとに修繕積立金を改定する仕組みも導入した。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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