これまで数々のマンション管理の例を見てきたマンションコミュニティ研究会代表の廣田信子さんは、こう指摘する。先の西京極大門ハイツも、1回目の修繕工事で資金不足という痛い目にあったことが、その後の運営体制を大きく変えるきっかけになった。

「問題が表面化した時こそ、どう取り組むかが問われる。どうやったらうまく回るかという視点で、楽しみながら試行錯誤できる管理組合は強い。そうした意味で、今回の法改正をチャンスと捉え、自分たちのマンションに生かすよう真剣に取り組んでほしいと思います」(廣田さん)

 法改正とは、今年、全面施行になった改正マンション管理適正化法。マンションの管理に自治体がお墨付きを与える「マンション管理計画認定制度」が4月からスタートし、6月に第1号の認定(東京都板橋区にあるマンション「高島平ハイツ」)が出たばかりで、9月1日に第2号として、先の西京極大門ハイツが認定された。自治体によって取り組み方が異なるが、既存マンションには管理状況の届け出を条例で義務化し、分譲前のマンションにも分譲会社からの管理計画の届け出を義務化する動きもある。自治体がマンションの管理状況を把握して助言や支援を行うことで管理不全を予防し、良好なマンションストックや住環境を形成するのが狙いだ。

「管理状況を改善するためのサポートを手厚くしていこうという自治体の動きを、活用しない手はない。何より管理をきちんとやっていこうという動きは、そこに住む人の安心感や誇りにもつながるはずです」(同)

 認定制度の普及や管理への意識の高まりを受け、今後は「管理がきちんとできているマンションを買いたい」というニーズがさらに強まるとも見られている。マンション問題に詳しい米山秀隆さん(大阪経済法科大学教授)は言う。

「マンション管理の目的は、突き詰めると“中古物件としての競争力を維持すること”にある。この競争力は、立地、管理状況、そして知ってもらうための広報活動の3点が物を言う。自治体からの認定や評価は、管理を頑張っているというアピールにも使える」

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